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経営財務かわら版 第146号 令和7年9月号

近年、原材料価格やエネルギーコストの高騰、従業員の賃上げの必要性等を背景に中小企業の経営は厳しくなったおり、その原資を確保することが求められています。特に中小企業にとっては、こうしたコストの上昇分を自社の商品・サービスの価格に適正に反映させる「価格転嫁」が、経営の安定化・強化に不可決です。

  2025年の通常国会で成立した「改正下請法」では、発注者側に対して一方的な代金額を決定すること、手形による代金の支払いといった行為を禁止しました。これにより、価格転嫁や値上げ交渉がしやすくなる制度的な後押しがされています。今回はそもそも「下請法」とはどのような法律かを説明します。

※「下請法」では、具体的に委託事業者が守らなければならない「4つの義務」と、委託事業者が行ってはいけない「11の禁止行為」が定められています。

⑴義務

① 書面の交付義務等

口頭による発注は、発注時の取引条件等が不明確でトラブルが生じやすく、受注側が不利益を受けることが多いため、受注者の役務の内容、製造委託等代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項等を記載した書面を受注者に交付しなければなりません。

② 書類作成・保存義務

トラブルを未然に防ぐとともに、行政機関の検査の迅速さ、正確さを確保する目的で定められました。2年間の保存義務があります。

③ 支払期日を定める義務

検査するかどうかを問わず、発注した物品等を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で支払期日を定める必要があります。

④ 遅延利息の支払義務

⑵禁止行為

たとえ中小受託事業者の了解を得ていても、また、委託事業者に違法性の意識がなくても、下記の禁止事項を行ってしまうと、法律違反となります。

① 受領拒否の禁止

中小受託事業者の責めに帰すべき理由がないのに、注文した物品等または情報成果物の受領を拒むことできません。また、発注を取り消すことで発注時に定められた納期に受領を拒むこと、納期を延期することにより発注時に定められた納期に受け取らないことも禁止されています。

② 代金の支払遅延の禁止

発注した物品等の受領日から起算して60日以内と定められている支払期日までに、製造委託等代金を支払わないことはできません。検査、検収に日数がかかる場合でも支払期日までに支払わなければ支払遅延となります。

③ 代金の減額の禁止

発注時に決定した製造委託等代金を発注後に減額することはできません。協賛金の徴収、原材料価格の下落など、名目や方法、金額にかかわらず、あらゆる減額行為が禁止されています。

④ 返品の禁止

中小受託者の責めに帰すべき理由がないのに、発注した物品等を受領後に返品することです。不良品などがあった場合には、受領後6か月以内(一般消費者向け保証がある場合1年以内)に限って返品することが認められています。

⑤ 買いたたきの禁止

発注のとき製造委託等代金の額を決定する際に、通常支払われる対価に比べ著しく低い金額を定めることは禁止されています。

⑥ 購入強制・役務の利用強制の禁止

⑦ 報復措置の禁止

公正取引委員会、中小企業庁、事業所管省庁に違反行為を知らせたことを理由に、中小受託事業者に対して取引数量の削減、取引停止など不利益な取扱いをすること

⑧ 有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止

⑨ 割引困難な手形の交付禁止

⑩ 不当な経済上の利益の提供要請の禁止

取引に影響を及ぼすこととなる者が中小受託事業者に金銭・労働力の提供を要請するのは、不当な経済上の利益の提供要請に該当するおそれがあります。

⑪ 不当な給付内容の変更・やり直しの禁止

中小受託事業者の責めに帰すべき理由がないのに、発注の取消し・発注内容の変更や、受領したあとのやり直し・追加作業を行わせる場合に、その費用を委託事業者が負担しないことです。

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